kenny_desuのひとりごと

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LAWSON presents TrySail Live Tour 2021 “Re Bon Voyage”に寄せて

ポケットモンスター金/銀で最も心震えたセリフ。

「きみは いま! カントーちほう への だいいっぽを ふみだした!」


旅の終わりに向かっていると思っていたところで感じた、終わりの続き。

第一世代で旅した面影を残しつつ、新たな形で構成されていたカントー地方

変わらないことも変わったことも、全てが愛おしくてワクワクした。

そんな経験が誰しも一度はあるだろう。

 

 

……あるよね?

 

 

 


今回のツアータイトルでもあり、アルバム表題曲名でもある「Re Bon Voyage」。

これを3つの要素から考えてみたい。

 

1つは歌詞にも出てくる「reborn」。

次に「Bon Voyage(よい旅を!)」にかかるReを踏まえた「再出発」。

最後に初回生産限定盤にも彩られている「リボン」。

 

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「Reborn」を辞書を引いてみると「(精神的に)生まれ変わった,再生した」意味合いだという。

生まれ変わるという意味ではあるけれど、精神的なニュアンスが強いというのが自分のイメージだった。

実際の用法では物理的な生まれ変わりにも、単に新しい自分を見つけることにも、とにかく広い意味で用いられるようである。


新たな発見。そう言われるとツアー全体的にそういった傾向があったと思う。
既存曲は『adrenaline!!!』や『sewing dream』のように改めてじっくりと見せたり、『Baby My Step』のように思い切り崩したりと、曲に対して今まで持っていた印象や思い出を見つめ直す機会が多かった。


一方で新規曲はというと、ツアーを通してどんどん崩壊振りきっていった『マイハートリバイバル』が特にそうだと思うが、これまでのTrySailを通して獲得してきた経験を存分に活かしたステージングをしていたと思う。

今までの経験があるからこそのメリハリ、割り切り。

 

2ndツアーだったか、曲を仲間にしていくという話をしていたのを思い出した。

公演を重ねることでより良いパフォーマンスを形作っていく。

思い出を作って、心身に馴染ませていく。そういうイメージだ。


でも今回は最初から馴染んでいた。

そういう曲だからなのか、自分の第一印象が理由なのか、あるいは別の何かがあるのかはわからないが、最初の神戸公演でそう感じた。

 

 

 

 

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──アルバムタイトルの「Re Bon Voyage」は、フランス語で「よい旅を」を意味する“bon voyage”に、「再び」を意味する接頭辞“re”を付けたものだと思いますが、皆さんはどのように解釈されました?

麻倉 去年のデビュー5周年と、今年3月のライブを経てまたここから再スタートするという意味もありますし、みんなへのプレゼント的な意味で“Re Bon”と“リボン”をかけているんですよ。なので、私たちもそういう意識でアルバムの制作に臨むことができました。

natalie.mu

 

「再出発」について、インタビューでもこのように語られていた。

 


再出発。いろいろな意味がある。

ゼロから出直す、中断していたものを再開する、心機一転。


これまでの歴史に一区切りをつけ、新たな一歩を踏み出す。

その役割を果たすのは、本来であれば5周年のステージになるはずだったと思うが、実際にはDouble the Capeを経ることで区切りとなった。

区切りをつけるというのは、編集点を作るというか、事でもあると思っていて。

編集点の前と後で、全く別のことをやってもよい。

つまりこれまでと同じ方向に進むことも、全く別の方向に舵を切ることも、さらには立ち止まってもよい。


その中で彼女らが進んだ道は「これまで」と「これから」を繋ぐこと、その姿を見せることなのではないか。そう考えた。

今回のツアーは新しいアルバムを引っ提げているものの、今まで築き上げてきたものが根底にある。

既存楽曲は改めてじっくりと見せたり、遊びの要素をどんどん入れてブラッシュアップしていったり。


今回のツアーに適した「再出発」の表現は「今までのものが下地としてあって、それをさらに飛び越えていく」といったところだろうか。

 

 

ちょっと横道にそれるんだけど、「オールOK」というのがすごく好きで。


オール、櫂(かい)とも言うんだけど、これは船の推進力を得るための道具。

櫂を使って船を進ませることを「漕ぐ」(こぐ)というし、オールがないと前に進めない。

その船を漕いでゆけ おまえの手で漕いでゆけ

おまえが消えて喜ぶ者に おまえのオールをまかせるな

ここで『宙船/TOKIO』を引用したけれども、自分の中でパッと思い浮かんだのがこれなので。

オールは船を漕ぐ、つまり自分で道を進むために欠かせないもので、それを他人に委ねることは、自分の全てを預けることと同義。

つまりオールを任せることは自分の全て(=ALL)を任せることであるというダブルミーニングだと思っているけど、これと同じようにかかっていることない? ないか。


直接的に「船」を感じるところは多々あるけれども、こんなところにもこそっと忍ばせているんじゃないか? という遊び心があるんじゃないかと、その気にさせてくれるのが面白いよね。


2ndツアーでのTAILWINDでもそうだったが、『Re Bon Voyage』や今日もここから始まるのだと強く思わせてくれる感覚が非常に面白かった曲だと思う。

 

 

 

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リボンを目にする場面は色々あるけれど、一番イメージしやすいのはプレゼントだと思う。

人から人に対する贈り物に添えられる、人と人とを結びつけるモチーフ。


人と人を繋ぐ手段は移り変わるが、思い出が宿る場所や景色はそう変わらないものだと思っている。

『モノラル』の歌詞にも「メッセージ画面」という表現が出てくる。

今、人と人とを繋ぐ手段はスマートフォントークアプリが主流だろう。

少し前にはガラケーでのメール。件名の「Re:」が蓄積されていくことに気持ちが高鳴った人も多いはず。

 

香水/瑛人 2020年

夜中にいきなりさぁ いつ空いてるのってLINE

好きだよ。~100回の公開~/ソナーポケット 2011年

記念日のメール たくさんのハートマーク

お互い送り合って 増えてったカギのマーク

開いた携帯の中にいた二人は 笑って笑って笑って笑っていた

Movin' on without you/宇多田ヒカル 1998年

夜中の3時a.m. 枕元のPHS

あなただけ見つめてる/大黒摩季 1993年

あなたがそう 喜ぶから

化粧をやめたわ

どこにいても捕まるように ポケベル持ったわ

 

適当な曲から適当な歌詞をピックアップしただけだが、LINE、ガラケー、メール、ポケベルと、時代によって連絡手段が移り変わっていることがわかる。さらに遡ると公衆電話やカセットになるのだろう。


その時々の主流の連絡手段が歌詞に残っているのが面白い。

もしかしたら将来はオーグマーのように、AR技術の発達によってスマートフォンを開く必要すらなくなるのかもしれない。

こいつ直接脳内に…!

 

出来事は思い出になり過去となり、やがては記憶も薄れていく。

それでも、胸の中にある限りは生き続けている。そういうものだと思うし、これからそうなっていくものが一番のプレゼントだったのだろう。

人は いつ死ぬと思う・・・?

心臓を銃(ピストル)で撃ち抜かれた時・・・・・・違う 

不治の病に犯された時・・・・・・違う 

猛毒キノコのスープを飲んだ時・・・・・・違う!!!

・・・人に 忘れられた時さ・・・!!!

 

 

 

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「ただいま」と「おかえり」を言える場所を私たちが準備して待ってたいなっていう風に思いました

先のDouble the Capeで夏川さんがこんなことを話していた。


ホームがそこに在る。

今回のツアーってまさにそんな感じだったんじゃないかなと。


「今までのものが下地としてあって、それをさらに飛び越えていく」、再出発をこのように表現した。

過去のツアーを思い出させるようなシーン、曲、景色。それらが懐かしさを刺激する要素として盛り込みつつ、これまでにない発展形を見せてくれていたことが大きいだろう。

毎回アップデートされていきながらも、「いつもの景色」があった。そのように感じられた。


当たり前のものが当たり前にあることのなんと素晴らしいことか。

この2年ほどで今まで常識だと思っていたものがひっくり返された。

それは生活様式しかり考え方しかり。我々が望むかどうかに関係なく、「新しい」ことに巻き込まれていった。


そういった時勢に煽られてというのもあるだろうが、変わらないものがいっそう愛おしく感じられるようになっていたのだろう。

一方で、変わっていって良かったこともあるはず。

「またやりたいとは思わないが、あれはあれでよかった」といった過去の出来事があるように、後で振り返れば全ていい思い出になるのかもしれない。


結局のところ、物事はいずれ変わり、当たり前のものがいつまでもあるとは限らない。

ごく当たり前のことだが、忘れがちなこと、目を背けがちなことでもある。

 

「きらきら手を振る君の声が笑顔が
当たり前のことなんかじゃなくて」

「変わらないこと変わってくこと
そのどれもが愛おしくて」

「ずっとこれからもよろしくね」


ここに『ひだまりの場所』の歌詞を引用する。今回のツアーをひとことに凝縮するなら、これらの言葉になるのだと思う。

なんでもないようなその笑顔が 明日を照らす光に


ここまで書いていて今思い出したけど、adrenaline!!!の歌詞も良い。

いつもの景色があって、いつもの笑顔があってそれに救われて。でもそれは当たり前ではなくて。ツアーもいつかは終わる。

でもいつかは終わるそんなひとときがたまらなく楽しく、愛おしく、美しい。

そんなツアーだったと思う。

 


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そういえばこのツアーは「愛」がテーマだと語られていた。

愛がテーマの作品……パッと思いつくだけでも片手で足りないほどだが、それほどに人類普遍の、永遠のテーマと言えるだろう。


元来「愛」という言葉は様々なものを対象に取り、広く用いられる。

長々と愛を語るのも無粋なことであるので、ここでは「愛は求めるものではなく与えるもの」といったところに落ち着くと言ってしまおう。


北九州公演では雨宮天さんが「気持ちを受け取ってぶつけあえるツアーだった」と話していたが、その通りだろう。

気持ちをぶつけあうというのも、一方的ではなく双方向であるのがポイント。

毎回アップデートを続けるパフォーマンスを受け取り、身振り手振りや多動態度で反応を返していく。声が出せない時勢だからこそより際立つ行為。

そんな営みに対して、あるいはそれが行われている空間・時間に対して、全精力をもって向かい合う。愛なくしては発生しないことだと思う。


いつかは終わると少し前に書いたが、『ひだまりの場所』では別れの言葉は「バイバイ」ではなく「またね」なんだよな。"また"会おうという約束のニュアンス。

この「愛」に溢れた時間と空間が再び訪れることを願ってやまない。

 

 

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以下余談。

なつき度で進化するポケモンっていいよね。敵側のポケモンがなつき度進化をしていると色々と想像できて面白い。

例によってシャイニングパールを発売日からポチポチしていたんだけど、旅パで適当に起用していたムウマージくんが幾度となくピンチを切り開いてくれたので好きになっちゃった。時間と思い出が積み重なることで変わっていくものってやっぱりあるんだなあ。

第二世代初出で第四世代以降進化系が追加されたポケモンだいすきクラブとして生きていくか。

 


最後になるけど、Baby My Stepの初出は2ndライブなので誰か訂正しておいてください。